NEW TRAVEL, NEW NORMAL.

五感が刺激され、
心身が元気に

 人は新しい場所へ行くと幸せを感じるというデータや、旅行中は血中のストレス物質・コルチゾールが低下するといった研究結果が発表されています。最近は旅が認知症予防を目指す脳活になると注目も。

「今どき☆新シニア研究所」の稲葉光亮さんに旅の効能を聞きました。

Profile

稲葉いなば 光亮みつすけ さん

 ADKマーケティング・ソリューションズ「今どき☆新シニア研究所」所長。高齢社会エキスパートの資格を持ち、執筆、講演など多数。

―「今どき☆新シニア研究所」はシニア層を対象にしたマーケティングサポートを手がけていらっしゃいます。50~79歳の男女に関心のある話題を調査したところ、1位が「国内旅行」だったそうですね。
 ADKが実施した「生活者総合調査2022」で、50~70代の約5割が「国内旅行」と回答し、関心事のトップでした。40代以下は約4割で、旅行に興味がないわけではありませんが、世代別だと特に60代以上は若年層を大きく上回っていました。男女とも、年齢が上がるほど旅行への関心が高まっているのが特徴です。
関心のある話題 旅行(国内)男女50〜70代 50.3% / 男女40代以下 38.4%
―シニア世代は旅のどのような点に魅力を感じているのでしょう。
 若い頃からアグレッシブに人生を切り開いてきた今のシニア世代は、新たな挑戦に積極的です。旅で得られる達成感や感動体験は大きな魅力でしょう。人生経験が豊富な大人ならではの楽しみもあります。その一つが、リピート=再体験です。思い出の地を再訪したり、昔かなわなかったことを「今度こそ」とリベンジしたり。団塊世代のファンが多いビートルズに「Get Back」という楽曲がありますが、まさに「あの頃に戻ろうよ」。実は私も “大人の修学旅行”と名付けて、かつて訪れた場所を巡る旅に凝っています。
長崎文学旅での1枚
―旅が体や心に与える影響はありますか。
 見て聞いて、嗅いで触って、食べて楽しむ。旅は五感が刺激されるので、体と心に良い影響があるのは間違いないと思います。旅を実現するには計画性や実行力が求められますから、頭をフル回転させます。脳活にもとても向いているといえます。
 以前、カリブ海のクルーズ旅に参加した時、大病を克服された方々と一緒になりました。それぞれお一人で参加されてとても元気で明るかったので、そうした過去をお聞きして驚いたのですが、旅には人生のつらさ、悲しさをのみ込み、心身を刷新する力があるように感じました。
 「旅の疲れは、次の旅を計画すると消える」と旅の達人の極意を教えてくれた年上の方もいらっしゃいます。旅によって、体や気持ちが引き締まる作用もあるのではないでしょうか。
風情ある“島鉄”車両
―稲葉さんは旅が趣味とお聞きしました。印象に残っているスポットは。
 コロナ禍対応のリモートワークで本を読む時間が増え、昨年は遠藤周作を集中して読んだのですが、長崎が舞台の『沈黙』や『女の一生』に影響され、中学校の修学旅行以来、45年ぶりに長崎へ出かけました。現地を歩くと、小説の主人公たちの姿や思いがより鮮明に伝わってきて、心に染み入りました。バスを乗り継ぎ、海辺の「遠藤周作文学館」へ足を延ばしたのも良い思い出です。  また長崎市内だけでなく、憧れの「雲仙観光ホテル」にも宿泊。その帰りには島原駅から諫早駅まで1時間強、島原鉄道に乗って有明海を一望できる景色や車内放送を楽しみました。“島鉄”、いいですね。
―これから旅を計画する人へ。
 私も含め、旅好きは無理をしがちですので申します。「気をつけよう! 見過ぎ、聞き過ぎ、歩き過ぎ。食べ過ぎ、飲み過ぎ、はしゃぎ過ぎ」。九州の皆さんには、私の出身地・広島県の福山城をお勧めします。JR福山駅の本当に目の前で、 今年築城400年に合わせた大改修が完了しました。