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九州の観光情報

インタビュー

山に登ると心が満たされて、明日からも頑張れる

九州の山々を巡り、撮影した写真をSNSにアップしている大久保紫織さん。美しい景色と伸び伸び過ごす姿を通して山の魅力を発信し、インスタグラムのフォロワーは1万4000人を超えます。出会いを大事に歩くという大久保さんに、好きな山や登山の楽しみなどを聞きました。

大久保紫織さん
1994年生まれ。インスタ(@yama_shiori_)による情報発信の他、法華院温泉山荘でのイベント開催や九州の山を紹介する多彩なサポート活動も。
-大久保さんが登山を始めたきっかけを教えてください。
 大学2年生の時、福岡県太宰府市の宝満山に初めて登りました。山頂からのきれいな眺めと達成感が忘れられなくて、一気に山が大好きに。県内の他の山、それから九州各地へと範囲が広がり、登山歴は9年目に突入しました。
-山に行くようになって、変化したことはありますか。
 気持ちを前向きに切り替えられるようになりました。山に登ると心がすごく満たされて、「また明日からも頑張ろう」と元気が湧いてきます。心が健やかで、体も動かすからか、山で出会う人は、高齢の人も驚くほど若く見えます。山では年齢も職業も関係なく、みんなでおしゃべりする機会が多いからかもしれません。登山中や頂上、朝日待ちの時など、よく居合わせた人同士で「どこから来たの?」と話が始まります。人との出会いも登山の楽しみ。山がつないでくれる縁が増えました。
ふわっと、かわいいアケボノツツジ
-インスタの写真は鮮やかな四季の色が目を引きます。春は花の色が印象的です。
 毎年春になると、アケボノツツジを求めて祖母山系の山と大崩山に行きます。4~5月に見頃を迎える、ピンク色のふわふわしたツツジで大好きなんです。群生して咲き誇るミヤマキリシマも感動的ですが、単体で見るかわいさはアケボノツツジが個人的には圧倒的勝利です。植物の名前は登山者に教えてもらったり、アプリで見たりして覚えるようになりました。
-この季節の登山で気を付けることは。
 3~4月はまだ寒いので、防寒着は多めが安心です。低い山はトイレがない場合が多いので、携帯トイレもお忘れなく。山頂で食べる即席麺はおいしいですが、スープを飲み干すのがきついという声をよく聞きます。粉末タイプの凝固剤が市販されているので、あると便利ですよ。
 春の山といえば生き生きとした緑色をイメージしますが、阿蘇やくじゅうの山は野焼きをするので、3~4月ごろは茶色っぽいです。新緑の景色は、6~7月あたりがお薦めです。
-お気に入りの九州の山はどこですか。
 くじゅうの山が好きで、中でも天狗てんぐじょうがお気に入りです。1780メートルの山ですが、標高の高い登山口まで車で行けます。山の上から、水をたたえた御池を見下ろせて、春は緑の中だったり、冬は凍っていたり、季節によって見え方が違っていつ行っても新鮮です。
 登山を始めたばかりだと、景色を眺める余裕はないかもしれませんが、慣れるまでゆっくりと心地よく歩けるペースで登ってみてくださいね。山を登った後、温泉やご飯を食べに出かけるのもとっても楽しいので、ぜひまるごと満喫してください。
季節によって見え方が変わる御池
天狗ヶ城から九州本土最高峰の中岳を眺める
黄色のマンサクやミツマタの咲く山も好き

アドバイス

◎登山アドバイスは全て監修・平野泰祐さん (日本山岳ガイド協会認定登山ガイド)

登山届

 山に登る前に登山届(登山計画書)を提出しましょう。万が一、山岳遭難が発生した場合に捜索救助の大切な情報になります。警察や登山口のポストに提出する他、登山計画作成・提出システム「コンパス」を利用すれば、インターネットで簡単に、全国のどの山域でも登山届を提出できます。

コンパス▶︎ https://www.mt-compass.com

服装

 ウエアは汗冷えを防ぐために、綿ではなく、速乾性の高い化繊を選びましょう。下着も同様です。初心者は登り始め10~20分の所で、その後は約1時間おきくらいに衣服で体温を調整するといいです。靴は防水性があり、足底の溝が深いものを。しばらく履いてない登山靴は経年劣化が進んでいる場合があるので、使用前によくチェックしてください。

装備品

 ストック(トレッキングポール)は、基本的に2本使います。両手で持つことで足にかかる負担が分散され、膝の故障などを防ぎます。雨や風をしのぐ防寒着、レインウエアや低い山ならポンチョも忘れずに。たとえ低山でも、緊急時に備えてヘッドライトや遭難時に体温を維持できるエマージェンシーシートもリュックサックに入れておきましょう。

水・食料

 登山中は、小まめなカロリー補給が鉄則。チョコレートやあめ、ナッツ類、栄養調整食品などの行動食を休憩のたびに食べましょう。脱水も心配です。行動中の脱水量は体重×行動時間×5ミリリットルで割り出せます。体重50キロの人が4時間行動した場合は1000ミリリットル。一つの目安として1リットル、暑い時季は2リットルの水を持参することをお勧めします。

地図

 事前に登山ルートやコースタイムを調べ、登山にはルートを記した地図を携行しましょう。最近は便利な登山アプリを併用する人も増えています。「YAMAP」は全国の登山地図を確認できる上、電波の届かない場所でも現在地が分かり、遭難や迷子の防止にも。アプリを使用時はオフラインモードにしておくと、バッテリーの節約になります。

緊急時の備え

 九州には、気軽に登れる低山が多くありますが、「低い山だから大丈夫」という油断は危険です。午後3時ごろには下山する計画を立てておくと安心です。情報が多い有名な山と違い、低山は登山道が分かりにくく迷いやすかったり、道が整備されていなかったりすることも。迷った時は「来た道を戻る」「見晴らしの良い上を目指す」を心がけて行動を。